特定技能と技能実習の最大の違いは、制度の目的です。技能実習は「技能移転による国際貢献」を目的とし、特定技能は「人手不足分野で即戦力となる外国人の確保」を目的としています。この違いから、採用ルート(監理団体を通すか、直接採用できるか)、転職の可否(技能実習は原則不可、特定技能は一定の範囲で可能)、受入れ人数枠、費用の構造が異なります。なお、技能実習制度は2027年4月1日に育成就労制度へ移行する予定です。
制度の比較表
出入国在留管理庁の制度説明資料(2026年9月29日更新)をもとに、主な違いを整理します。
| 項目 | 技能実習(団体監理型) | 特定技能1号 |
|---|---|---|
| 目的 | 技能移転を通じた開発途上国への国際協力 | 人手不足分野での即戦力人材の確保 |
| 根拠法 | 技能実習法・入管法 | 入管法 |
| 在留期間 | 1号1年以内、2号2年以内、3号2年以内(合計最長5年) | 通算5年(相当の理由がある場合は6年) |
| 入国時の試験 | 原則なし(介護職種のみ日本語要件あり) | 技能試験・日本語試験で確認(技能実習2号良好修了者は免除) |
| 送出機関 | 外国政府の推薦・認定を受けた機関 | 制度上の必須機関ではない(国により本国手続あり) |
| 監理・支援 | 監理団体が監理 | 受入れ企業または登録支援機関が支援 |
| マッチング | 通常、監理団体と送出機関を通す | 直接採用、または国内外のあっせん機関を通じた採用が可能 |
| 受入れ人数枠 | 常勤職員数に応じた枠あり | 原則なし(介護・建設を除く) |
| 転籍・転職 | 原則不可(倒産等やむを得ない場合を除く) | 同一業務区分内などで転職可能 |
規模の目安として、2025年6月末時点の在留者数は、技能実習生が449,432人、特定技能1号が333,123人でした。
採用ルートの違い
技能実習では、受入れ企業(実習実施者)は通常、監理団体に加入し、監理団体と海外の送出機関を通じて実習生を受け入れます。技能実習計画の認定を受けたうえで入国し、入国後に講習を受けてから実習が始まります。
特定技能には監理団体の仕組みがありません。受入れ企業が海外で直接採用するほか、国内外の職業紹介事業者を通じて採用することもできます。国内では、技能実習を修了した人や留学生が在留資格を変更して働くルートもあります。ただし、ベトナムなど一部の国では、本国の法令に基づく送出し手続が定められているため、国籍ごとの手続を確認する必要があります。
転職ができるかどうか
技能実習は「実習」という性格上、原則として実習先の変更はできません。実習実施者の倒産などやむを得ない場合や、2号から3号へ移行する際に限って転籍が認められています。
特定技能は「労働者」として雇用される制度のため、同じ業務区分内、または試験で技能水準の共通性が確認されている業務区分間であれば転職が可能です。受入れ企業にとっては、採用しやすい反面、待遇や職場環境が十分でなければ転職される可能性があるということです。賃金を日本人と同等以上にすることは制度上の要件ですが、定着には面談や生活支援の質も影響します。
費用の構造の違い
具体的な金額は監理団体・登録支援機関・紹介会社ごとに異なるため、ここでは構造を比較します。
- 技能実習:監理団体への加入費や監理費、送出機関に関する費用、入国後講習の費用などが中心です。
- 特定技能:職業紹介事業者を利用する場合の紹介手数料、登録支援機関に委託する場合の支援委託費、国によっては送出機関に関する費用が中心です。自社支援を選べば支援委託費は発生しませんが、支援体制を自社で整える必要があります。
いずれの制度でも、受入れ企業は日本人と同等以上の報酬を支払う必要があります。特定技能では、支援にかかる費用を外国人本人に負担させることはできません。支援委託の考え方は登録支援機関とは?役割・費用・選び方を受入れ企業向けに解説で解説しています。
技能実習から特定技能への移行
技能実習2号を良好に修了した外国人は、実習で修得した技能と従事しようとする業務に関連性が認められる場合、特定技能1号の技能試験と日本語試験が免除されます。どの職種・作業がどの分野・業務区分に対応するかは、出入国在留管理庁が特定技能制度のページで公表している対応表(2026年6月1日時点)で確認できます。
自社で技能実習を修了した人材を特定技能として引き続き雇用できれば、受入れ企業にとっては、仕事に慣れた人材に長く働いてもらえる選択肢になります。なお、特定技能1号での在留は通算5年が上限のため、さらに長く働いてもらうには、2号への移行(対象分野のみ)を視野に入れる必要があります。
自社に合う制度を考えるポイント
どちらの制度が適しているかは、業務内容と受入れの目的によって変わります。検討の際は、次の観点で整理すると判断しやすくなります。
- 即戦力が必要か、育成から始めるか:試験に合格した人材を採用したい場合は特定技能、未経験者を一から育てたい場合は技能実習(2027年4月以降は育成就労)が候補になります。
- 対象分野・職種に入っているか:特定技能は19分野、技能実習は移行対象職種が定められており、対象範囲が一致しない場合があります。
- 支援や監理を誰が担うか:特定技能は自社支援か登録支援機関への委託、技能実習は監理団体による監理が前提です。
2027年4月以降の変化
2024年6月21日に公布された改正法により、技能実習制度は発展的に解消され、2027年4月1日から育成就労制度が始まります。施行日時点で技能実習を行っている人は、一定の範囲で次の段階まで技能実習を続けることができますが、技能実習から育成就労へ移行することはできません。育成就労では、一定の要件のもとで本人の意向による転籍が認められるなど、技能実習とは仕組みが大きく変わります。制度の全体像は特定技能とは?受入れ企業が最初に知っておくべき制度の全体像もあわせてご覧ください。
まとめ
- 技能実習は国際貢献、特定技能は人手不足分野の即戦力確保が目的です。
- 特定技能は監理団体を通さず直接採用でき、同一業務区分内などでの転職が可能です。
- 費用は、技能実習が監理費中心、特定技能が紹介手数料・支援委託費中心という構造の違いがあります。
- 技能実習2号の良好修了者は特定技能1号の試験が免除され、2027年4月からは育成就労制度が始まります。
株式会社QHコンサルティングでは、技能実習からの移行を含め、特定技能人材の採用についてご相談をお受けしています。特定技能人材の採用について相談する、またはお問い合わせフォームからご連絡ください。
本記事は2026年10月時点の公開情報をもとに作成しています。制度は変更されることがあるため、最新情報は各省庁の発表をご確認ください。