育成就労制度は、技能実習制度を発展的に解消して2027年4月1日から始まる新しい制度です。企業にとっての大きな変化は、目的が「国際貢献」から「人手不足分野での人材の育成・確保」に変わること、一定の要件のもとで本人の意向による転籍(転職)が認められること、送出機関に支払う費用の外国人負担に上限(月給の2か月分)が設けられ、超える分は受入れ企業側の負担になること、監理団体が許可制の「監理支援機関」に変わることです。育成就労の3年間で特定技能1号の水準まで育てることが前提になります。
育成就労制度の概要
育成就労制度は、2024年6月21日に公布された改正法によって創設されました(出典:出入国在留管理庁「育成就労制度の概要(令和8年7月改訂)」)。
| 項目 | 技能実習 | 育成就労 |
|---|---|---|
| 目的 | 技能移転による国際貢献 | 人手不足分野での人材の育成・確保 |
| 期間 | 最長5年(1号〜3号) | 原則3年(試験不合格時は最長1年の延長可) |
| 対象 | 移行対象職種 | 育成就労産業分野(2026年10月時点で17分野) |
| 本人意向の転籍 | 原則不可 | 一定の要件のもとで可能 |
| 監理する機関 | 監理団体 | 監理支援機関(許可制・外部監査人の設置が要件) |
| 計画の認定 | 外国人技能実習機構 | 外国人育成就労機構 |
| 受入れ見込数 | 設定なし | 分野ごとに設定(全体で426,200人、2029年3月末まで) |
育成就労産業分野は、特定技能の19分野から自動車運送業と航空を除いた17分野です。育成就労を終えた人材は、試験に合格すれば特定技能1号へ移行し、さらに2号へ進む道筋が想定されています。
企業に関わる主な変更点
1. 育成就労計画の認定と段階的な試験
受入れ企業(育成就労実施者)は、外国人ごとに「育成就労計画」を作成し、外国人育成就労機構の認定を受けます。計画には期間(3年以内)、技能や日本語能力の目標などを記載します。就労開始時には日本語能力A1相当以上の試験合格または相当する講習の受講、1年経過時と育成終了時には技能・日本語の試験で到達度を確認します。
日本語能力の水準は「日本語教育の参照枠」に基づいて示されており、一般的には就労開始時にA1相当以上、1年経過時にA2.1相当以上、育成終了時(特定技能1号への移行時)にA2.2相当以上が求められます。A2.1は「A1に到達し、A2.2到達に向けて学習が進展しているレベル」と説明されています。介護など、分野によってはより高い水準が設定されています。
2. 本人意向による転籍
一定の要件を満たせば、外国人本人の希望による転籍が認められます。出入国在留管理庁の育成就労制度Q&Aによると、主な要件は次のとおりです。
- 現在の受入れ企業での就労期間が、分野ごとに定める転籍制限期間(1年から2年の範囲)を超えていること
- 分野ごとに定める技能と日本語能力の水準を満たしていること
- 転籍先が同一の業務区分であり、優良な育成就労実施者と認められていること
1年を超える制限期間が設定された分野でも、受入れ企業の判断で1年とすることができます。また、転籍先が一定以上の初期費用を負担する仕組みが設けられる予定ですが、具体額を定める告示は2026年10月時点で未公表です。転籍が可能になる以上、賃金や職場環境、育成の質が人材の定着を左右することになります。
3. 送出し費用の負担ルール
送出機関が外国人から徴収できる費用の上限は、月給の2か月分とされました。上限を超える費用は、育成就労実施者または監理支援機関が負担します。2か月分は上限であり、本人負担はできる限り少なくすることが望ましいとされています。
4. 監理支援機関と受入れ人数枠
監理団体に代わる監理支援機関は許可制で、外部監査人の設置などが要件です。既存の監理団体も、新たに許可を受けなければ監理支援事業を行えません。受入れ人数枠は、常勤職員数に応じて1年目から3年目の合計で設定されます。労働者派遣による受入れは、季節性のある農業・漁業に限られます。
技能実習からの経過措置
2027年4月1日の施行日時点で技能実習を行っている人は、施行後も技能実習を続けることができ、要件を満たせば次の段階(1号から2号など)へ進めます。ただし、3号への移行は、施行日時点で2号を1年以上行っている人に限られます。施行日前に技能実習計画の認定を申請している場合は、施行日から3か月以内に開始する計画に限り、施行日以後に入国できる場合があります。技能実習から育成就労へ移行することはできません。
同時期に予定されている特定技能側の変更
- 1号特定技能外国人の支援を外部に委託する場合、委託先は登録支援機関に限られます。
- 2027年4月1日から、支援責任者・支援担当者の選任や人数基準など、支援体制の要件が見直されます(支援体制に係る要件改正)。
- 特定技能2号の日本語要件(B1相当以上)は、2027年4月1日以降の在留資格認定証明書交付申請から確認が始まる予定です。
受入れ企業が準備しておきたいこと
- 取引のある監理団体が、監理支援機関の許可を受ける予定かを確認する
- 3年間の育成計画と、1年目・3年目の試験に向けた日本語・技能の学習体制を考える
- 転籍を前提に、賃金・評価・相談体制など定着の仕組みを見直す
- 育成終了後に特定技能1号として雇用を続ける場合の支援体制を準備する
監理支援機関の許可や育成就労計画の認定には、施行日前から申請できる仕組みが設けられています。2027年4月の受入れ開始を予定している場合は、早めにスケジュールを確認しておきましょう。
技能実習と特定技能の違いは特定技能と技能実習の違い:採用ルート・転職・費用の比較で整理しています。運用の細部は告示や運用要領で順次示されるため、出入国在留管理庁の育成就労制度ページを定期的に確認してください。
まとめ
- 育成就労制度は2027年4月1日に始まり、3年間で特定技能1号水準の人材を育成します。
- 本人意向の転籍が一定の要件で認められ、定着の工夫がより重要になります。
- 送出し費用の本人負担は月給2か月分が上限で、超える分は受入れ側の負担です。
- 監理支援機関の許可状況や、特定技能側の支援体制の見直しも含めて準備を進めましょう。
株式会社QHコンサルティングでは、育成就労の開始を見据えた外国人材の採用計画や、特定技能での受入れについてご相談をお受けしています。特定技能人材の採用について相談する、またはお問い合わせフォームからご連絡ください。
本記事は2026年10月時点の公開情報をもとに作成しています。制度は変更されることがあるため、最新情報は各省庁の発表をご確認ください。