特定技能の「義務的支援」とは、1号特定技能外国人を受け入れる企業が、支援計画に基づいて必ず実施しなければならない10項目の支援です。具体的には、①事前ガイダンス、②出入国時の送迎、③住居確保・生活に必要な契約の支援、④生活オリエンテーション、⑤公的手続等への同行、⑥日本語学習の機会の提供、⑦相談・苦情への対応、⑧日本人との交流促進、⑨転職支援(受入れ側の都合で契約を解除する場合)、⑩定期的な面談・行政機関への通報です。本記事では、これらを実務の時系列に沿って解説します。
義務的支援の基本ルール
支援の内容は、受入れ企業が作成する「1号特定技能外国人支援計画」に記載し、在留資格の申請時に提出します。支援は受入れ企業が自ら行うか、登録支援機関に全部または一部を委託できます(出典:出入国在留管理庁 制度説明資料)。
- 支援の対象は特定技能1号の外国人で、2号は対象外です。
- 情報提供や相談対応は、外国人が十分理解できる言語で行います。
- 支援に要する費用を、直接または間接に外国人に負担させることはできません。
- 2025年4月1日以降、支援計画は外国人が働く事業所・住む地域の市区町村が実施する共生施策を踏まえて作成することが求められています。
入国前・申請前に行う支援(①②)
①事前ガイダンス
在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請の前に、労働条件、活動内容、入国手続、保証金徴収の有無などを説明します。対面またはテレビ電話等で、本人確認をしたうえで行う必要があり、文書の郵送やメールだけでは認められません。保証金や違約金の契約が禁止されていることもあわせて伝えます。
②出入国する際の送迎
入国時は空港等から事業所または住居まで、帰国時は空港の保安検査場まで送迎・同行します。国内在住者を採用する場合の取扱いを含め、具体的な実施方法は出入国在留管理庁の運用要領で確認しておきましょう。
入国直後・就労開始時に行う支援(③④⑤)
③住居確保・生活に必要な契約の支援
賃貸契約の連帯保証人になる、社宅を提供するなどの方法で住居の確保を支援します。あわせて、銀行口座の開設、携帯電話やライフラインの契約を案内し、手続を補助します。住居費などを給与から控除する場合は、実費相当の適正な額であること、本人が内容を理解して合意していることが必要です。
④生活オリエンテーション
日本のルールやマナー、公共機関の利用方法、連絡先、災害時の対応などを説明します。出入国在留管理庁の参考様式(生活オリエンテーションの確認書)では、十分に理解するために少なくとも8時間以上行うことが必要とされています。
⑤公的手続等への同行
必要に応じて、住居地の届出、社会保障、税などの手続に同行し、書類作成を補助します。
就労中に継続して行う支援(⑥⑦⑧⑩)
⑥日本語学習の機会の提供
日本語教室の案内、学習教材の情報提供などを行います。地域の日本語教室は市区町村が実施していることも多いため、共生施策の確認とあわせて調べておくと効率的です。
⑦相談・苦情への対応
職場や生活上の相談・苦情に、外国人が十分理解できる言語で対応し、内容に応じて助言・指導を行います。
⑧日本人との交流促進
自治会など地域住民との交流の場や、地域の祭りなどの行事を案内し、参加を補助します。
⑩定期的な面談・行政機関への通報
支援責任者または支援担当者が、外国人本人とその上司等の双方と、3か月に1回以上面談します。2025年4月に定期届出が年1回に変わった後も、面談の頻度は従来どおり3か月に1回以上です。面談で労働基準法違反などを把握した場合は、関係行政機関に通報します。
雇用契約を終了する場合の支援(⑨)
受入れ企業側の都合で雇用契約を解除する場合は、転職先探しの手伝いや推薦状の作成、求職活動のための有給休暇の付与、必要な行政手続の情報提供を行います。外国人本人の都合による退職は、この支援の対象ではありませんが、退職後は雇用契約終了の届出が必要です。
10項目のタイミング早見表
| 時期 | 支援項目 | 主な実施者の目安 |
|---|---|---|
| 申請前 | ①事前ガイダンス | 支援担当者(通訳を含む) |
| 入国時・帰国時 | ②送迎 | 支援担当者 |
| 入国直後 | ③住居・契約支援、④生活オリエンテーション、⑤公的手続同行 | 支援担当者、総務担当 |
| 就労中 | ⑥日本語学習、⑦相談対応、⑧交流促進、⑩定期面談 | 支援責任者・支援担当者、現場の上司 |
| 会社都合の契約解除時 | ⑨転職支援 | 支援責任者、人事担当 |
実務で押さえておきたい注意点
- 記録を残す:支援の実施状況は文書で残し、雇用契約終了日から1年以上保管します。本人の申出で支援を行わなかった場合も、その申出の記録を保管します。
- 実施困難時の届出:自社支援で支援計画どおりに実施できなかった場合などは、認知した日から14日以内に「1号特定技能外国人支援計画の実施困難に係る届出」を提出します(出入国在留管理庁「令和7年4月1日施行の省令改正について」)。
- 年1回の定期届出:4月1日から翌年3月31日までの受入れ・活動・支援実施状況を、翌年の4月1日から5月31日までに届け出ます。
- 2027年4月の改正:支援責任者・支援担当者の選任や人数基準などの要件が見直される予定です(支援体制に係る要件改正)。
自社で全項目を担うのが難しい場合は、登録支援機関への委託も選択肢です。委託の考え方は登録支援機関とは?役割・費用・選び方を受入れ企業向けに解説をご覧ください。
まとめ
- 義務的支援は10項目あり、支援計画に記載して申請時に提出します。
- 申請前(事前ガイダンス)から雇用終了時(転職支援)まで、時期ごとに必要な支援が異なります。
- 定期面談は3か月に1回以上、本人と上司の双方と行います。
- 記録の保管、実施困難時の届出、年1回の定期届出まで含めて体制を整えることが大切です。
株式会社QHコンサルティングでは、義務的支援の実施や生活面のサポートについて、受入れ企業の体制に合わせたご相談をお受けしています。登録支援の委託について相談する、またはお問い合わせフォームからご連絡ください。
本記事は2026年10月時点の公開情報をもとに作成しています。制度は変更されることがあるため、最新情報は各省庁の発表をご確認ください。